このシリーズでは、無調系の和音をオリジナル曲のコード進行に活かすテクニックについて書いています。
(前回までの記事はこちら。)
今回は、マルチトニックシステムをご紹介します。
マルチトニックシステム
マルチトニックシステムは、1オクターブ内にある12音を等分割して現れた音をルートにしてコード進行を組むテクニックです。
、、文章にすると訳わかんないですね笑
詳しく説明していきます。
例えば、1オクターブ内にある12音を4で割ります。
すると半音3個づつに分かれますね。
もし1オクターブをCの音から始めた場合、
C-D♭-D
E♭-E-F
G♭-G-A♭
A-B♭-B
と分けられます。
このとき、それぞれの先頭にある音、C-E♭-G♭-Aをルート音にしたコードをつなげてコード進行を組みます。
コードのカタチは何でもOKですが、メジャーセブンスやマイナーセブンスがまとまりやすいです。
例えばこんな感じ。
CM7-E♭M7-G♭M7-AM7
1オクターブの分割の仕方は、4分割以外に3分割や2分割も可能です。
3分割だと、
C-D♭-D-E♭
E-F-G♭-G
A♭-A-B♭-B
になり、C・E・A♭のルート音をつなぐコード進行になります。
同様に2分割だと、C・G♭になります。
最初に出したコード進行の例をもう一回みてみます。
(4分割の場合のやつです。)
CM7-E♭M7-G♭M7-AM7
これだけ見ると、コンスタント・ストラクチャーと同じように見えます。
(コンスタント・ストラクチャーについてはこちらの記事をどうぞ。)
マルチトニックシステムは、次のⅡ-Ⅴ化とリハモを使うとその効果を発揮しやすいです。
Ⅱ-Ⅴ化とリハモ
Ⅱ-Ⅴ化とは、あるコードの前に2度上のマイナーセブンスコードと5度上のドミナントセブンスコードを挿入することです。
CM7にⅡ-Ⅴ化すると、Dm7→G7→CM7、となります。
これを先ほどの例に適用してみましょう。
CM7-E♭M7-G♭M7-AM7
の4つのコードすべてにⅡ-Ⅴ化します。
すると、
Dm7-G7-CM7
-Fm7-B♭7-E♭M7
-A♭m7-D♭7-G♭M7
-Bm7-E7-AM7
となります。
さらにここからリハモをしていきましょう。
リハモとは、いまあるコードを他のコードに入れ替えること。
いろんなテクニックがありますが、ここでは2つのテクニックを使ってみます。
subⅤ
もともとのコード進行にあるドミナントセブンスコードを増4度(半音6個)上のドミナントセブンスコードと入れ替えるテクニックです。
ドミナントセブンスコードであれば、どこでも入れ替えOKです。
先ほどの例の、G7とE7のところを変えてみます。
Dm7-D♭7-CM7
-Fm7-B♭7-E♭M7
-A♭m7-D♭7-G♭M7
-Bm7-B♭7-AM7
エクステンデッド・ドミナント
あるコードの5度上のドミナントセブンスコードを直前に挿入するテクニックです。
どのコードの前に挿入してもいいんですが、ここではランダムに、CM7・Fm7・A♭m7・AM7の前にそれぞれ挿入してみます。
Dm7-D♭7-G7-CM7
-C7-Fm7-B♭7-E♭M7
-E♭7-A♭m7-D♭7-G♭M7
-Bm7-B♭7-E7-AM7
だいぶ複雑になりましたね。
このままでもいいんですが、始まりのコードをズラして雰囲気が変わるか試してみます。
例えば、CM7を始まりにズラしてみましょう。
CM7-C7-Fm7-B♭7
E♭M7-E♭7-A♭m7-D♭7
G♭M7-Bm7-B♭7-E7
AM7-Dm7-D♭7-G7
ダイアトニックコードのコード進行からは出て来ないコードがたくさん登場する進行が完成しました。
使い方
実際に弾いてみるとわかりますが、マルチトニックシステムは無調というよりは、ダイアトニックのコード進行のような無調のような、どちら付かずのまま進んで行く感じのコード進行になりやすいです。
無調とダイアトニックコードの中間みたいなイメージでしょうか。
逆にいうと、ダイアトニックスケールのメロディが乗せ易いとも言えます。
AメロやBメロなど、無調っぽいけどメロディはしっかりダイアトニックスケールでつくってる、みたいな感じにしたいときはオススメです。
無調感の調整
リハモをとことんやっていけば完全な無調に近づけていくことも可能です。
ダイアトニックコードを避けてコードをどんどん入れ替えていけば、無調な方向へ調整できます。
ですがかなり複雑になるので、まずはここでは基本を抑えてもらえればと思います。
といったわけで今回はマルチトニックシステムをご紹介しました。
次回は、無調的なコード進行を考える際に重要なベースモーションについて解説したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。