コード進行をもっとカッコよくしたいと思ったとき、いろんな種類のコードを覚えてたくさん曲の中に詰め込む、というのをやりがちです。
それも良いんですが、シンプルなコードだけでも響かせ方を変えるだけでカッコよく聴かせる事ができますよ、ということを書いてみたいと思います。
ボイシングとは
同じコード進行でも、コードのどの音をどんな順番で鳴らすかによって、聴こえ方が変わってきます。
この、コードの構成音の中から、どの音を使って(または使わないで)どんなふうに並べて鳴らすのか、という考え方のことをボイシングと言います。
具体例で見てみましょう。
例えばこんなコード進行があったとします。
FM7→E7→Am7→Gm7
これを普通に構成音どおりに鳴らすとこんな感じになります。
(キーボードで実際に引いてみましょう。)
FM7:ファ・ラ・ド・ミ
E7:ミ・ソ#・シ・レ
Am7:ラ・ド・ミ・ソ
Gm7:ソ・シ♭・レ・ファ
左から順に低い音、1番右が1番高い音になるように弾きます。
これをコードごとに、鳴らす音の順番を変えたり、使う音を減らしたり(または増やしたり)して、違った響きに聴こえるように変えていきます。
例えばこんな感じ。
FM7:(ファ)・ミ・ソ・ド
E7:(ミ)・レ・ソ#・ド
Am7:(ラ)・レ・ソ・ド
Gm7:(ソ)・ミ・ラ・ド
カッコのついた音(ルート音)は1オクターブ低い位置で弾きます。
どうでしょうか?かなり印象が変わったと思います。
このように、コードに対してどんなふうに音を鳴らすかを考えるのがボイシングです。
テンションの自動付加
上の例を解説していきます。
まず全体的に、ルート音を1オクターブ低くする事で響きに広がりを持たせています。
その上で、コードごとにみていきましょう。
ポイントは各コードで使っている構成音のインターバル(度数)です。
(インターバルの知識については、こちらで詳しく解説しています。)
FM7:(ファ)・ミ・ソ・ド
最初に鳴らした構成音(ファ・ラ・ド・ミ)と比べると、ラがソに入れ替わっています。インターバルで言うと、M3がなくなって、替わりに9thのテンションが登場しています。
ボイシングを考えるときのテクニックとして、テンションの自動付加というのがあります。
音を入れ替える際、テンションも選択肢に含めて良い、というものです。
(テンションの知識については、こちらの記事をご覧ください。)
FM7は9thのテンションが使用可能なコードなので、M3を9thに置き換えたわけです。
E7:(ミ)・レ・ソ#・ド
これも元の構成音(ミ・ソ#・シ・レ)と見比べると、シがドに入れ替わっています。E7のコードでドは♭13thです。
E7はドミナントセブンスコードなので♭13thを使用可能です。
(ドミナントセブンスコードのテンションについては、こちらの記事をどうぞ。)
また、先ほどのFM7から滑らかにつなげるため、ドを1番高い位置に配置しています。FM7でも1番高い音がドなので、音の移動が少なく次のE7へスムーズに進行できます。
Am7:(ラ)・レ・ソ・ド
こちらも同様に元の構成音(ラ・ド・ミ・ソ)と比べると、ミがレに置き換わっています。レは11thのテンションにあたります。
また、E7の構成音と比べると、ルート以外はソ#がソに変わっただけです。
これもE7から滑らかにAm7へ進行できます。
Gm7:(ソ)・ミ・ラ・ド
元の構成音はソ・シ♭・レ・ファ。
ファ→ミ・レ→ド・シ♭→ラ、とルート以外全て置き換わっています。
インターバルを確認すると、ミ→13th・ラ→9th・ド→11th、で全てマイナーセブンスコードで使えるテンションです。
テンションに置き換えれば置き換えるほど、元の響きから印象がガラリと変わります。
横の流れが重要
こんなカタチで構成音を入れ替えたり、順番を変えたりする事でコード進行の印象をコントロールする事ができます。
自分の曲のコード進行も、曲のイメージに合わせていろいろボイシングしてみると新たな発見があるかもしれません。
もう一つボイシングの際のポイントは、横の流れがスッキリするように考える事です。
次のコードに進む際に、なるべく音の動きが少ない方がスッキリと綺麗な聴こえ方をします。
上の例でも、全てのコードで1番高い音をドの音に統一し、音の動きに無駄がないように配置しています。
できれば次の音に移る際の動きを全て、半音または全音以内になるように配置できると完璧です。
といったわけでボイシングのお話でした。
たくさんコードを使うだけがカッコいい曲というわけではありません。
シンプルなコード進行でも、ボイシングできらりと光る曲に変身します。
また、一つのコードをたくさんの響きで聴かせるられると表現の幅自体も広がると思います。
是非ご自身の曲で使ってみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。