転調というテクニックは、曲の盛り上がりや空気感の変化などを演出できる重要なテクニックです。
今回は、転調するときの考え方や転調しやすい調について書いてみたいと思います。
11個の転調先
一般的な音楽は、ドからシまで1オクターブ内に12の音があります。
なのでキー=調についても、これらの音に対応する12個のキー(調)が存在します。
(キーや転調についての基本については、こちらもあわせて記事をご覧ください。)
つまり、あるキーから他のキーに行くときには11個の選択肢があるわけです。
じゃあ、どのキーに転調するのが正解なんでしょうか?
転調のしやすさ
もちろん、絶対にこのキーに転調するのが正解というものはありません。
曲の表現したいことや方向性によって転調先も変わってきます。
しかし、転調がしやすいキーとしにくいキーというのは存在します。
転調先のキーを考えるとき、どのキーへ行くのがスムーズかという、転調のしやすさの基準は以下のようになります。
①共通音が多い
転調前と後で、使われるダイアトニックスケールに共通音が多いほど転調しやすいです。
(ダイアトニックスケールについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)
例を出して考えてみます。
※ここからは、わかりやすいように転調前のキーを全てCとして書いていきます。
キーCに使われるダイアトニックスケールの音は、ドレミファソラシです。
これともっとも共通音が多いダイアトニックスケールは、Gダイアトニックスケール(ソラシドレミファ♯)とFダイアトニックスケール(ファソラシ♭ドレミ)です。
それぞれCダイアトニックスケールと1音だけ違う音が入っていて、あとは同じ音です。
このことから、キーGかキーFへ行くのがもっとも転調しやすい、ということができます。
また同様に考えると、キーDとキーB♭はそれぞれキーCとの共通音が5つあり、これらも転調しやすいキーといえると思います。
しかし、キーGやキーFに比べると若干の転調しにくさは否めません。
②同主短調
同主短調とは、あるキーから見てルート音と同じ音のスケールがエオリアンスケール(マイナースケール)になるキーのことです。
文章だとややこしいですが、これはつまり、もとのキーの半音3つ上のキーのことです。
なので、キーCの同主短調はキーE♭になります。
キーE♭はマイナーキーに直すとキーCmと同じです。
ルートが同じメジャーとマイナーのキー同士なので、互いの転調も行いやすいです。
(メジャーとマイナーについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。)
③半音でスライドできる
ダイアトニックスケールの音が半音違いのキー同士も転調しやすいです。
音を半音スライドさせるだけなので、一瞬にして転調することができます。
キーCと半音違いのキーは、キーBとキーD♭です。
また意外ですが、キーF♯もこの分類に入ります。
キーF♯のダイアトニックスケールは、ファ♯ソ♯ラ♯シド♯レ♯ミ♯です。
これらの音を半音上にスライドすると、ソラシドレミファ♯となります。
最後のファ♯だけ、キーCの音ではありませんが、半音スライド前のミ♯はファと同じ音です。
なので、ミ♯だけはスライドさせずにファと読み替えれば、全てキーCのダイアトニックスケールの音になります。
このことから、F♯も半音スライドで転調しやすいキーということになります。
転調しにくいキー
さて、ここまで出てきた転調先のキーをまとめてみます。
キーG・F・E♭・D・B♭・B・D♭・F♯
(おおむね、上に記載した順が転調のしやすい順と考えていいと思います。)
1番転調しやすい方のキー3つは、近親調と呼ばれています。
ここで出てきていないキーは、
キーA・A♭・E
の3つです。
これらのキーは共通音も少なく、もとのキーからは遠いキーと考えていいと思います。
表現に従う
最初のほうにも書きましたが、転調のしやすさはあくまで技術的な基準であって、芸術的な基準ではありません。
転調を使うとき、転調先のキーを決めるのは最終的には表現の内容です。
ただ、技術的な転調のしやすさ・しにくさを知っていると、制作を進めていくうえで余裕を持って転調先を選ぶことができると思います。
みなさんもオリジナル曲づくりの参考にしてみて下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。