コードには安定しているものと、不安定なものがあるのをご存知でしょうか?
どんなコードが安定でどんなコードが不安定なのかを知ると、コード進行の流れがダイナミックにつくれたり、狙った通りの曲の展開をつくれるようになります。
ファンクションでの安定・不安定
コードの安定・不安定には、2つの意味があります。
ひとつ目は、ファンクションからみた場合です。
ファンクションとは、使われているコードがコード進行の中でどんな役割をするか、という各コードの機能のこと。
(詳しくはこちらの記事をご覧下さい。)
上の記事にもありますが、トニックの機能をもつコードが安定したコード、ドミナントの機能をもつコードが不安定、ということになります。
ちなみに、サブドミナントのコードはその中間です。
このファンクションからみた安定・不安定と、次のトライトーンからみた安定・不安定とは互いに関連があります。
トライトーンを含むコード
安定・不安定のもう一つの意味は、トライトーンを含むコードかどうかということです。
トライトーンとは、半音6個分の音の距離のこと。
例えば、ドの音に対するトライトーンはファ#になります。
このトライトーンの関係にある2音をコードの構成音に含んでいると、そのコードは不安定ということになります。
トライトーンの関係にある2音は、全ての音程の中で最も響きが濁る音程だと言われています。
(実際にキーボードで弾いてみるとよくわかります。)
濁った響きを持つコードなので、ずっと鳴らしているよりも、響きが濁っていない他のコードへ進行したくなります。
そのため、トライトーンを含むコードは不安定とされているのです。
ドミナントセブンスコード
トライトーンを含むコードの代表は、ドミナントセブンスコードです。
例えば、G7の構成音は、ソ・シ・レ・ファです。
シとファが半音6個離れていてトライトーンの関係です。
この2音が不安定な響きを作るため、他のコードへ進んで安定したくなります。
では、この2つをどのように動かすと安定するでしょか。
以前の記事でボイシングという話を書きましたが、
ここでは、次のコードへ進むときは最小の距離(1半音または1全音)で音を動かすのがいいですよ、というお話をしました。
この考えを適用して考えてみます。
シとファの場合、シを半音上・ファを半音下にそれぞれ動かすと、ドとミになります。
ドとミは、半音4個分(長3度)の距離になりとても安定した響きになります。
(これもキーボードで弾いてみるとよくわかります。)
変更後の構成音を確認すると、ソ・ド・レ・ミです。
これを並び替えると、Cadd9(ド・レ・ミ・ソ)というコードがみえてきます。
このG7→Cという流れはまさに、ファンクション記事で書いた、ドミナントからトニックへの流れと一致します。
ファンクションでの不安定なコードがドミナントセブンスコードなのはこのためです。
(ちなみにCとCadd9は、ここではほぼ同じと考えてOKです。詳しくはテンションについての記事をご参照ください。)
安定・不安定を曲に活かす
2つの意味での安定・不安定をみてきました。
では、これを曲にどう活かせばいいでしょうか。
一つは曲の展開を考える際に使えます。
1番聴かせてたいメロディのところは安定のコード=トニックを使う。
その直前、トニックへつなげるための盛り上げどころに不安定=ドミナントを使う、というのが一般的です。
もう一つは、コード進行のバリエーションを増やすのに使えます。
例えば、こんなコード進行。
CM7→G7→B♭7→Am7
キーはCです。
トニック(安定)のCM7で始まり、ドミナント(不安定)のG7へ進行します。
次のB♭7は、上で書いたトライトーンの解消の応用です。
G7のシの音を半音上でなく、半音下へ動かします。
すると、シ♭・レ・ファ・ソ、という構成音がみえてきます。
これは、ソを半音上にしてやれば近親調のキーE♭のドミナントであるB♭7(シ♭・レ・ファ・ラ♭)になります。
(近親調については、こちらをご覧ください。)
このように、近親調への行き来のきっかけとして使えば、近親調のコードを折り混ぜたコード進行の流れをよりスムーズにできます。
これを応用すると、転調のきっかけとしても使うことができます。
先ほどのコード進行で言えば、
CM7→G7→B♭7→E♭M7
のように、B♭7の後にキーCのコードに戻らずに、その後のコード進行をキーE♭のコードにしてしまえばOK。
トライトーンの解決を挟むことでスムーズに次のキーへつなげられます。
安定・不安定は曲の要
よく、「音楽とは緊張と緩和でできている」といわれます。
これはつまり、上で書いたような安定・不安定を上手く配置することで曲の物語を進めていく、という音楽の構造を言っているのです。
安定・不安定の概念は曲の要になる重要な考え方なんですね。
以上、参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。